「予習なし・復習主義」を貫くSSH指定校が、家庭学習を定着させた方法
兵庫県立龍野高等学校
兵庫県立龍野高等学校は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け、理数教育と国際理解教育に注力する伝統ある進学校です。英語科の松井先生は、3年間にわたって学年全体でリピートークを導入し、劇的な成果を上げています。直近のGTECでは、学年平均スコアが高1から高2の1年間で111.9点上昇し、過去5年で最高値を記録。躍進の背景を松井先生にうかがいました。
- 導入前の課題
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- 「予習なし・復習主義」の指導方針で、家庭学習の定着が長年の悩み
- 導入の効果
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- 達成度を「見える化」し、家庭学習を習慣化
3年間の積み重ねが、はっきりと数字に表れた
― 早速ですが、リピートーク導入後の成果について教えてください。
(松井先生)一番分かりやすいのはGTECのスコアですね。過去5年間のデータと比較しているのですが、現3年生の高2時のGTECスコアは2021年度以来の最高値になりました。1年間で学年平均が111.9点上昇しています。
― 1年間の伸びとしてはかなり大きいですね。技能ごとの傾向は?
(松井先生)特に伸びを感じたのは、ライティングとスピーキングです。GTECのスピーキングは音読パートから始まるので、正しい発音で自信を持って話せていました。GTECの試験監督に入ってくださった他学年の先生からは、「全然スピーキングのスキルが違う」と肌でも感じたと言っていただきました。
― 模試についてはいかがでしょうか。
(松井先生)直近1月の進研模試では、過去5年で2番目に成績がいい結果でした。本校ではあまり出ていなかった学年平均偏差値の水準を、安定して維持しています。底上げができていると感じます。
― 英検については?
(松井先生)英検二次は最初に音読から始まるので、そこでのミスがほぼないですね。正しい発音ができている生徒がほとんどで、二次試験はほぼしっかり受かってきます。

土台は「復習主義」──ただし、家でやらせるまでが長年の悩みだった
― 1年間で111.9点というのは、偶然では出ない数字です。何を意図して指導されてきたのですか?
(松井先生)私は基本的にラウンド制学習指導を軸にしています。京都教育大学名誉教授の鈴木寿一先生のゼミ生だったこともあり、「予習なし」を貫いています。辞書も調べてくるな、と。入試問題も模試も初見のものを扱わなければいけないので、あえて何もしてこないように授業を組み立てます。
その代わり、宿題は「復習」で徹底させる。いかに家で、授業でやったものを定着させるか――これがずっと私の課題でした。
― ただ、その「家でやらせる」が一番難しいとよく聞きます。
(松井先生)そうなんです。しかも、うちは生徒の幅がとても広い学校でして。偏差値70を超える生徒から、下は40前半まで。学年内の「差」は、毎年広がってきています。
さらに龍野高校は宿題が比較的多い学校です。生徒は当然、優先順位をつけて他教科の宿題からやる。「これはやったほうがいいよ」程度の指示では、「証拠が見えないもの」は後回しにされてしまう傾向がありました。
音読筆写もさせていましたが、家でちゃんとやってきたかどうかは結局確認しきれない。いかに家で授業の内容を定着させるか、教科書をどれだけ頭に叩き込むかを、ずっと悩んでいたんです。
― 同じ悩みを持っている学校は多そうです。
(松井先生)そう思います。進学校であればあるほど、宿題は他教科とぶつかります。「音読が大事」と頭では分かっていても、紙の宿題ではどうしても優先順位を上げきれない。証拠が残らないものは、こちらでも追い切れないんです。
だからこそ、「証拠が残る」家庭学習の仕組みが必要でした。

なぜリピートークだったか――哲学を実行できる3つの機能
― 数あるアプリの中で、リピートークを選んだ理由を教えてください。
(松井先生)リピートークを知ったときに「ああ、これだ。自分(教員側)がさせたいことができる」と思ったんです。理由は3つあります。
(1) 自校のカリキュラムをまるごとデジタル化できる
教科書の『CROWN3』だけではなく、論理・表現の『Viewpoint Advanced』、その前は『Junior Executive』も使ってきました。さらに1年生のときから単語教材(『システム英単語』)まで、自校で使っているすべての教材をリピートークの中に組み込めるのが何より大きかったです。アプリは便利でも結局は付属教材しか使えないものが多い。リピートークは、自校のカリキュラムをそのままデジタル化できます。
単語学習で大きいのは、よく言われる「黄金の三角比」をそのまま指導に落とし込めることです。単語の「綴り」と「和訳」だけを結びつけても意味が全くなくて、その間に「読み方・発音」があってはじめて意味が理解できる――この考え方を、リピートーク上で実現できる。発音を経由して単語が定着する手応えがあり、トップ層の生徒は「このリピートークのこれがないと私、覚えられないんです」と言ってくれます。
単語は週次テストの1週間前に該当範囲を配信し、生徒は1週間で自学自習する。長期休みの課題は、通常授業より広い単位でのオーバーラッピングやシャドーイングなど、まとめ学習用のステップ構成に切り替えています。教材も時期も、こちらの設計で動かせるのが強みです。
(2) 達成度をダウンロードして、家庭学習を「見える化」できる
「習慣化は絶対にしなければいけない」と思っていたので、達成度をダウンロードして掲示しています。「いついつまでにやりなさい」と警告も出しながら。
クラス全員のリストを貼り出します。プライバシーも何もないかもしれませんが(笑)、やって当然ですので。これ、紙の音読筆写ではできないんです。生徒の側からも、誰がどれだけやっているかが見える。生徒の側にも危機感が生まれる仕組みです。
それでも家でやらない生徒には、テスト1週間前から「居残り」をやってもらいます。放課後、教室に来なさい、終わるまで帰れません、と。それを3日ほど続けると、ほとんどの生徒が終わります。他の先生からは「もはや教科指導じゃなく生徒指導ですね」と言われたこともあります(笑)。
(3) 判定ルールを学校の指導方針に合わせて作り込める
リピートークの判定ルール――ステップの必須化や、日本語・英語の表示制御など――を、学校の指導方針に合わせて高度にカスタマイズしています。最終ステップの提出が条件ですが、リピーティングやオーバーラッピングなど途中のステップも全員に必須化することで、学習プロセス全体を踏ませる設計にしています。
― 高3になった今、生徒の方から自主的に?
(松井先生)そういう生徒もやっぱり出てきますね。テスト前に自分で練習して、3回ほど提出してくる生徒もいます。生徒の方から動いてくれるようになる手応えがあります。

進路実現と、その先の”学ぶ楽しさ”の両立を目指して
― 最後に、先生が大切にしている英語教育への思いを伺えますか。
(松井先生)進学校としては、模試の偏差値や英検など、進路実現に直結する数値はやはり重要視せざるを得ません。まずは4技能をバランスよく伸ばし、進路につなげること。これが根本です。
ただ、受験のための英語という狭いものにとどまらず、英語って面白いんだよ、と。異文化理解も含めて、英語を学ぶことの楽しさ、大学や社会人になってから何がしたいのかを考えた上での学ぶ姿勢を、生徒には身につけてほしい。これがもう一つの願いです。
今の3年生、200名ほどが国公立に行けてもおかしくないという頑張りを見せてくれています。リピートークという武器を手にしてから、生徒の「習慣」を書き換えることができた3年間でした。
